この小説には以下の表現が含まれています
・性的描写
・同性愛
大丈夫な方はお読みください。
大丈夫だから読みます
アンビヴァレンスはエンドレスラブで 「小せぇな、世界は」 意外なことに声を出してみると本当にそんな気がするものだ。でもきっとイナには聞こえてないだろう。そっちの方がいい。煙草の灰がベッドに落ちないよう、床に転がっていた灰皿をひろいあげた。ベッドの端に座って何かしていたイナが振り向く。俺が黙って灰皿を差し出すと、イナは代わりになにかを差し出してきた。 「煙草。灰落とすなよ掃除めんどいから」「見て。ゴム、上手く結べたろ?」 イナのくわえた煙草から灰が落ちる。灰皿を投げ付けたが気にする様子もなく、中身の入ったコンドームを得意げに見つめている。バカだあいつは。うんざりして時計に目をやるとまだ6時で、それなのにもう太陽が顔を出している外に嫌気がさして、俺はベッドにもぐりこんだ。 「何、ダイヤ寝るのかよ。もう朝だぜ」 「誰のせいで寝れなかったんだ」 「自分だろ。あんあん喘いでたのはお前じゃん」 「揚げ足ばっかとるんじゃねーようぜえな」 「はいはい」 イナは立ち上がり、着替え始めたみたいだ。うとうとしながら音だけで彼の動きを読む。毎朝毎朝やってりゃ見てなくてもわかる。そんな自分に余計うんざりした。 ああ、死んでもいいかな。うんざりするのって、それだけでうんざりだし。何もかもが面倒なんだよな、俺ってそういうやつなんだよな。 「なぁ」 不意にイナが声をかけてきた。目を開けると彼のはしばみ色の目がすぐそこにある。イナの素性はしらない。本人は日本人と神様のハーフだとかぬかしていたけど、おそらくフランス人あたりとのハーフだろう。もとは赤茶色の髪の毛を、白銀に染めている彼の後ろ姿は好きだけど。 「お前、死ぬなよ」 「なんで」 「死体にちんこ突っ込むなんてまっぴらなんだよ。じゃあな愛してる」 ヤニくさい舌でべろりと俺の鼻を嘗めたイナは、やっぱり煙草をくわえて出ていった。空中にはイナが置いてった「愛してる」って文字と「ちんこ」って文字がぐるぐるループを描きながら浮いている。この部屋っていう小せぇ世界で、そりゃもう俺たちを簡潔に表した文字がぐるぐる回ってさ、頭もぐるぐるしてくる。ベッドから抜けだし、まだ裸だった自分の姿が玄関にある鏡に映っているのを見たら余計にぐるぐるしてきた。 ふらふらしながら歩きまわるとごみ箱に激突、当たり前にごみが出てきて、さっき捨てたコンドームも出てきて。そういえばこれが最後の一個だったことを思いだして、イライラしてきた。イナは買ってくるだろうか。コンビニでバイトしてんだったらパクってくるかな。けどあいつ生でやりたがるからな。でも腹壊すから嫌なんだよ。気持ち良いのは良いんだけど。大体男とやるから腹壊すんだよな。なんで俺は男とやんのかな。イナのこと好きだからかな愛してるから? まさかいや本当か。あいつはどうかわかんないけど俺は好きなんだろうな。だからやるのか。だからちんこと愛が並んでんのかな。仲良く浮いてら。 愛してる。 ちんこ。 そりゃ、セックス好きだもん、俺、男だし。イナのことも好きなんだろな、俺、人間だし。けどまっぴらってなんだろ。死体に何回かちんこ突っ込んだことあるのかなあいつ。それってやっぱ冷たいんだろうな。気持ち良さそうじゃん。 そんなことを考えてたら俺のちんこが勃起したので、イナの捨てたあのコンドームを口にいれてオナニーをした。そしたらすぐにイって、だからよけいに世界が小さく見えた。 着替えを終えてコンビニから出ると、昼間にあたためられた重たい空気が体を包みこむ。履き過ぎて薄くなった靴底からは直にアスファルトの熱が伝わり、かなり熱い。けどなんとなく、セックスのときのダイヤの方が熱いような気もする。言ったらあいつ怒るだろうな。怒ったら怒ったでおもしろいけどな。そんなことを考えながらダラダラ汗をかく俺は、ダイヤのことが大好きなんだろう。 午後からシフトに入ってるおばちゃんが今日はなぜか小遣いをくれて、それでちゃんとコンドームを買った。別に男同士だからガキできるわけじゃないのにな。 アパート直前の踏み切り前でずっと立ったままの奴がいる。ていうかダイヤだった。上半身は裸で、下はお気に入りのデニムをはいていて、コンビニの袋をぶら提げてる。逃げ水のせいで、微妙に揺らめいてはいるがダイヤだ。初めて会ったときと同じ格好してら。 雨の日に、アパートの前で濡れたまま座ってたあいつ。すがるように見つめてきた。あの目は、誘ってるとしか思えなくて。俺はそのままダイヤを自分の部屋に連れ込んで、抱いた。 噂じゃ、どっかの野暮ったい漫画の設定みたいに男娼だとかどっかのお偉いさんの愛人だとか、そういうことを色々といわれたけれど今のところ部屋から出て行かないところを見ると、そうでもないみたいだ。 ただ一つ、不安っつーか不気味に思うのはダイヤが不意に死んでしまいそうなことだ。雰囲気みたいな、そういうあいつを取りまいている空気がたまに、怖い。そしてあいつの目も、本当に死んだ目になる。死にそうな目になるんだ。死ぬとか、生きてるとか、そんな難しいこと考えるのは面倒だけど。何がいやって死体を片付けるのが面倒だろ。自殺だけは勘弁してほしいって、そう思うんだけどさ。そう思ってるってことはやっぱ俺、あいつのこと大好きなのかな。 死体って冷たいし、ちんこいれても全然反応ないから、つまんないんだよな。気持ち良いは良いんだけど。そんなことを考えていたらまた、ちんこが立ちそうだ。 ちょうどダイヤの肩に手を乗せると、遮断機が下りて電車が通過していく。顔を覗きこんでみると、例のあの顔をしていた。ぞっとする。けど、それもまた俺をそそる。 「なんか」 ダイヤが口を開いた。 「電車が、通ってくんだけど車輪が早すぎて止まってるように見えてそうしたら飛び込んでも跳ね返されるだけかな、って思ったんだ。でも跳ね返されたら死なないし、イナは死ぬなよって言っただろ」 「ああ。ま、死ぬなっつーか」 ポケットに手を突っ込んだら、タバコが切れていて妙にいらだってその手を、ダイヤのパンツの中に突っ込んで、ちんこを掴んだ。 「死ぬならヤってるときにしようぜ。俺が殺してやるよ」 「そっちの方が、気持ち良いから?」 「そう。ていうか、お前、今日バイトあったの?」 「ない。けどコンドーム切れてたじゃん」 「あ、俺なんか小遣いで買った」 「小遣い?」 そのままぼそぼそしゃべりながら、ダイヤのちんこをイかせて、俺のもイった。足が立たなくなったダイヤを抱きかかえて、アパートに帰ってまた、ヤった。 to be continued 09.1.13 改訂 |