And you



「鬱陶しい」

彼女は僕の隣で忌々しそうにそう吐き出した。顔もいつもとは違い本当にわずらわしそうにゆがませている。いや、なきそうなのかもしれない。結局今日まで、僕らは三年五ヶ月十二日付き合っていたわけだけど、僕はあまり彼女の些細な悩みや、不安に気づいてあげられなかっただろう。 今さら後悔しても遅いことなのだけれど。

「じゃ、もういいんでしょう。鍵、返して」
「ありがとう」
「謝られるのもいやだけど、感謝されるのもいやね」

いつもらしい彼女。 強がっているのか、普段どおりのか、やっぱりわからない。僕は結局「別れよう」の一言も彼女に任せてしまった。玄関を出ようとするが、なかなかタイミングがつかめない。彼女はじっと僕を見ているし、僕は自分のはいたスニーカーの爪先を眺めていた。

「あんたね」

彼女が口を開く。

「あたしが泣かないと思ったら大間違いだからね」

そうして追い出された。

気持ちが乗らないとき、この部屋のドアは重く分厚く感じたのに今はなんとも薄い。今更薄くなってくれたって。
いくら彼女の泣き声を聞かせてくれたって。
僕はあわててノブに手をかけひねったが、鍵が閉められていてもう開かない。

END

***
けなげ万歳!
 

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