この小説には以下の表現が含まれています
・同性愛
・過激な描写
大丈夫な方はお読みください。






大丈夫だから読みます



























































      
        




Gasp like a drowned Rat!



ぬるりとした感触がするのは、マツイの手が血に濡れているからではなくて、俺の体が血まみれだからだ。マツイはその大きな手を俺の肩にずしりと置いた。

 なんでそんな死にそうなくらい真面目くさった顔してんの?
 なんでこんな真っ赤なの?
 俺も、大渕さんも、マツイの手も、この部屋中が、なんで真っ赤?

そう聞きたくてしょうがなくて、俺の頬は自覚するほどにだらしなく緩みまくってた。

「ダイヤ、いいか、早くここから出ていくんだ。お前のことを思ってじゃない、社長のことを思ってだ。情夫に刺されたなんていう三面記事なんか書かれてたまるか」

最後の方はほとんど彼のつぶやきみたいだったが、大渕さんを刺したときのトランス状態から抜け出した俺としては、マツイの言うことはよくわかった。彼の後ろで慌ただしく動く、他の秘書たちが滑稽だ。


マツイは自分がもっているだけの金を俺に握らせるとそのままマンションから放り出した。Tシャツを脱ぎながら外にでる。さすがに血まみれのままで歩くほど非常識じゃない。
妙に生臭いと思って何の気無しに上を見上げると、さっきまでの真っ赤な夕日−夕日は見間違いであれは大渕さんの血か−はどこにいったのか、どす黒く動きの鈍い雲がどこからともなく立ち込めていて、いかにも雨が降ることを暗示していた。 まずい、と思って走りだしたのが先か、痛いと思うほど大粒の雨が降ってきたのが先か、とにかく濡れないということが不可能な状況で俺はでたらめに走りだした。なぜかふと思いついた住所がさして遠くないのを思い出し、大体何の、誰の住所かもわからなかったが走った。街中を走る人はみな、小さく猫背になって俯き走るから俺の上半身裸、という恰好を見咎める奴もいない。


15分ほど走り、うろ覚えの住所にたどり着く。その頃には、大渕さんの持っていた小さなメモ紙に書かれていた住所だと思い出していた。へんなところで記憶力があるのだ、と自分に関心しつつも辺りを見回す。オフィス街から少し走っただけでこんなど田舎に出るとは、意外だった。
正方形のたんぼの間を黒々としたアスファルトが規則正しく走っている。オフィス街から抜けてここにくるまで、目立ったランドマークといえば全国展開のコンビニと、ふるびたコインランドリーだった。雨宿りに入ってもよかったが、なぜか気乗りせずに結局ここまで来てしまった。だが、だからといってここに何があるわけでもない。見えるのはまばらに立ち並ぶ一軒家と、それなりに古いアパートだったりハイツだったりコーポだったり、だ。とりあえず手近なアパートの階段を昇り、通路の柵にもたれて息を整える。

俺、いつぶりに走ったんだろう。急に力が抜けて、その場にへたりこんだ。手に持ったTシャツは雑巾みたいで、雨に濡れたせいで染み込んでいた血が汚くにじんでいた。デニムのハーフパンツをはいていたが、それには奇跡的に血はついていなかった。というか雨に濡れていて確認もくそもないが。
 

刺しちゃったんだ、と感触を思い出そうとしてもうまくいかない。完璧トリップしてエキサイトしてた。あの大渕さんの目も、何かを重ねて勘違いしてる目だった。クスリなんかキメてなかったのに。へっと勝手に笑いが漏れると同時に、冷静になった脳みその一部が俺の指を震わせる。ガチガチと歯もなる。恐怖に震える自分と、それを遠くから見つめる自分がないまぜになっている感覚。

死んでしまいたい。なぜ俺は大渕さんに刺されないで、逆に刺してんだ。殺される、と危機を感じたからじゃない。正当防衛なんかじゃない。瞬時に、本当に瞬間、俺が殺さないといけないのではないか、と感じたのも事実だ。とはいえ、指が震えるこのざまはなんて臆病だろう。

「何、お前」

息が整ったころに不意に声をかけられた。顔を上げると俺みたいに濡れネズミになった銀髪の男が俺を見下ろしていた。

「人の部屋の前で、何だ?」

目つきも悪く、上背もある彼は俺のことをじっと見てくる。厄介事に巻き込まれるのはごめんだったがあいにく、そこから走り出す力はなかった。情けないことにひざがかくかくと痙攣を起こしている。何も答えないでいると、彼は右の口端を急角度にゆがめた。気持ちの悪い顔だったが、同時にその目の色に何かしらデジャヴを感じてもいた。なんだろう、初めて会っているのは確かだが、どこかで見たことがあるのも確かなようだ。

「お前、何もしゃべれねえの?耳も聞こえねえの?」
「話せるし、耳も聞こえる。邪魔ならどく。アンタには何もない」
「へえ、意外に声低いのな。女みたいななりして。行く宛てあんの?」

予想外の問いかけだったし、何をどう答えるべきかに戸惑った。そうこうしているしているうちに男は、俺が目の前に座っていたドアの鍵をあけて中に入ろうとしている。そして振り向いた。そのとき初めて、彼の口端がゆがんでいるのは笑っているからだと、気づいた。

「入れよ。Tシャツがなんで血まみれなのかなんて興味ねえしな」

 

行く宛のない俺は黙って従った。

部屋の中は湿気とタバコの臭い、そして体液特有のなんともいえない生臭さが漂っていた。雨の臭いとは確実に違う、不快感。
入ってすぐがダイニングキッチン(といっても台所とそばに大きめのテーブルがある)、ふすまで繋がっているのがリビングらしく、正面に窓があって右側にベッド、左の角に不釣合いなほど大きなテレビがおいてあった。部屋は全体的にごちゃごちゃとしているのに、殺伐とした雰囲気。まるで俺の前に、背を向けて立っているこの男みたいだと思う。
黙って玄関に立っていると、男は不意にタオルを投げてきた。

「立ってたいのか?拭けよ。あがれ」

若干かび臭いタオルだったが、贅沢はいえない。頭を拭きながらゆっくりと部屋に足を踏み入れた。歩くたびに雨水の足跡がつく。窓から外をみると、さっきよりもますます雨がひどくなっているようだった。滝のようになった雨はかなりの勢いで窓ガラスをつたっていく。
リビングまで行く。男はベッドに腰を下ろした。そこも相変わらずというか、ダイニングよりももっと体液のにおいがこいように感じた。

「アンタ、ここで何してんの?」
「初対面で言わないといけない義務あるか?」

口をつぐむ。確かにそうだし、そもそも俺は初対面のやつとこんなにも話そうとするような奴だったろうか。
男と目が合う。はしばみ色の目に俺がうつっている。驚くことにその間抜けな俺の顔は、欲情していた。馬鹿みたいだ。
男が手をのばし、俺の持っていたTシャツをとる。雨と血でぐしゃぐしゃなそれ。広げてみたり、折りたたんでみたり、匂いをかいだりしている。こっちが嫌悪を覚えてしまうほど、男とその血のくすんだ赤色は似合っていた。

「まだ、新しい血だな。こんなに汚すなんてお前、生理にでもなったのか?」
「Tシャツははくものじゃない」
「くそだな」

口端がぐい、とあがる。笑っているようには到底見えない。

「名前は?」

つ、と男の指が俺の上半身を撫でた。その指は細く長く、冷たい。雨のせいで体は冷えていたはずなのに、急に発熱し始めたようだった。彼の指そのものが、性欲をかきたてるようにうごくし、彼も俺に欲情しているのがわかる。

「ダイヤ。アンタは?」
「イナ。お前、男もいけるな」
「じゃなかったら?」
「拾わない」

犬か、と思ったがそれでもいい、早く犯してほしかった。


まぶしい、というよりも痛い、と思って目が覚めたのはこの部屋には遮光カーテンがないからだ。白い薄っぺらいカーテンはまったく光をさえぎろうとはせず、たとえば俺のケツみたいにゆるゆると甘受する。

「いつまで寝てる気だよ」

頭上から声が降ってきて、一瞬誰かわからなかったが顔を上げると同時に腰に鈍い痛みが走り、昨夜の一連を思い出して自然、顔がゆがんだ。

「はは、いい顔してるぜ、お前」

イナは声をあげて笑い―顔をゆがめて笑うのも気味が悪いが、それはそれでまた気持ちが悪い―俺のあごをぐい、と掴んだ。

「飯、なんか作れるかお前」
「・・・わからない」
「上等だ」

そのきつい体勢のままキスをした。容赦なく舌がうねって入り込んでくる。口の中だけ、特化してる生き物みたいにイナのキスは、相手を嬲って犯す。唾液が、だらしく開いた俺の口端から滴ってへそのあたりまでぬらした。自然、息が荒くなって勃起する。そうさせた張本人は俺のちんこをちらりと一瞥しただけで、何も言わずにそのまま玄関から出て行った。

 




もう、1年が経つ。俺がこのアパートに来て、1年。大渕さんを刺したことで、警察に追われることもとうとうなかった。
数え切れないほど死にたくなった。数え切れないほど億劫になった。数え切れないほどイナのちんこをくわえて、精液を飲み込んだ。

「俺よりも早く起きるなんて、何が起こるかわかんねえな」

隣で寝ていたはずのイナは、目をさまして早々にかすれた声で言った。何も答えず、ただその爬虫類じみた薄い色素の瞳をじっと見つめる。
俺が刺した、大渕さんの秘書のマツイがここへきてから一ヶ月。イナとマツイがどうやら知り合いだということはわかる。つまりイナは大渕さんとも関係があるということか。

息子?イナが?大渕さんの?

そう思えば思うほど、イナの目は大渕さんの目よく似ているとしか思えない。大渕さんは赤茶色の髪の毛をしていて、よく恥ずかしいと言っていたっけ。イナは一ヶ月ごとに髪をそめる。少し怠ると根本から伸びるのは赤茶色の毛だった。

「殺した」とつぶやいた大渕さん。「死体にちんこをつっこむのはうんざり」だと笑うイナ。

そもそも俺がここにたどり着いたのは、大渕さんのもっていた小さなメモを盗み見したからだ。走り書きのような小さなメモにはここの住所が記してあったはずだ。

「イナ」
「なんだ」

声が震えそうだ。

「お前、俺のことどこまで知ってる?」
「…突然、なんだ?」
「なんで、俺の名前を教えてないのに知ってた?」

イナは黙った。なまじ顔がいいものだから、無表情になるとまるで人形のようにしか見えない。
どれほどの沈黙だったが、動きはなかった。が、突然イナは大声で笑い始めたのだった。俺は動揺しているからか、胃が収縮を繰り返しているようで吐き気をおぼえてベッドから抜け出す。トイレにこもり、透明な胃液がでてきても吐き気はおさまらない。

イナはまだ、大声で笑っている。俺はトイレにむかってあえぐ。イナは笑う。俺はあえぐ。狂ってる。

胃液さえも全部できったかと思ったが、それでも吐き気はまだある。と、いきなり背を向けていた扉が開いてイナが入ってくる。もう笑ってはいなかった。

「な、お―」
「黙れ」

俺は見た。そのときのイナの目は、まさしく、俺に包丁を向けてきた大渕さんと同じだ。何回もその目を見ていたが、今の目が一番恍惚としていてそして、同じ瞳の色をしている。真っ赤。
イナはしゃがんでいた俺の足をひっぱってむりに四つんばいにさせると、股の間から手をいれて、ちんこをつかんだ。不意のことでびっくりしたからか、胃からまた胃液がせりあがってくる。

「やめ、やめろ―」

もがこうと思っても吐き続けたせいで力がはいらないし、イナが覆いかぶさってくると動けない。なんの前戯もなしに、イナのそそり立ったちんこが俺のケツにおしこまれていく。痛みしかない。口から唾液なのか胃液なのか、わからない液体がとめどなくあふれていく。

「うぁあ、あ、あ、ああ、ああああ」

頭をおさえつけられて、便器の中につっこまれた。息ができない。苦しい。痛い。なんだこれ、なんだ、死ぬのか、俺は死ぬのか。意識がもうろうとする頃に、頭からイナの手が離れて必死に息をした。そして落ち着くころにまた、つっこまれる。それの繰り返しだ。下半身もがっちりと固定されている。イナのちんこが俺の中ででかくなってく。こんな状況なのに、俺のちんこもどんどん勃起してく。

「ゆ。ゆ、ゆる。ゆるし、ゆるして―」

自然と口走ってた。

「母さん、かあぁさ、ん、ゆ、ゆるし、ゆるしてぇあぁああ」
「千尋」
「かぁああさんんぁああ、あ。ゆ、ゆるし、ごめんなぁさ、さぁい、ああいいぃいいい」

イくと同時に、気絶した。
暗転。


to be continued 


 

 

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