風葬


彼女はぼんやりと窓際におかれたベッドの上から外を眺めている。台風の勢いはとどまるところを知らず、数分前よりも強く風が吹き荒れていた。雨も上空から降ってきて弾丸みたいに窓に当たっては砕けていく。うちの窓って防弾だっけ、などとくだらないことを考えていた。

「風葬って知ってる?」

彼女は静かに微かに言ったので思わず聞き逃すところだった。

「なんだっけ、死体をそのまま放置しておくやつ?」
「そう。鳥たちが食べたりしていつか死体はなくなるの」

自分の死体が鳥たちに啄まれているところを想像したけれど、イマイチよくわからなかった。死っていうのはほどよく遠いのかもしれない。その時はそう思ったんだ。

「こんな台風の日には死体はどうなっちゃうのかな」
「飛ばされたりするんじゃねえ?人間って飛ぶかな」

ふざけて言ったつもりが、彼女は何か難しいことを考えているみたいだった。たとえば死とかいうやつを。彼女には死が近くに感じられるのだろうか。ねえ、何考えてるの。
不意に顔をあげ、僕を見つめた彼女の瞳には死にたいする恐怖と、けれども憧れが顕著に見てとれた。例えば学校の入学式の前日の複雑な気分だとか、彼女の顔はまさにそれだった。

「あたしは、死んだら風葬がいいな」

そっか、と頷きながらも内心は動揺と確信が渦巻いていた。いくら自分の死体で想像してもピンとこなかったのに、彼女の死体なら生々しく思えてしまうなんて。まだ温かい彼女の死体は急速にその熱を失いながら、弾丸の雨に打たれて落ち、窪み、漆黒のカラスに啄まれる。

「なんで?」
「最後ぐらい何かの役に立ちたいから」

彼女は視線を戻し、外を眺めている。風はまた威力を増したようだ。もしこのまま彼女を窓から突き落としたら―
目を閉じると、確かな興奮とともに彼女の死体が鮮明に浮かび上がる。彼女の表情は見えない。掌に汗がにじんだ。


END

***
復活第一作がコレってどうよ…
ずーっと携帯でぱちぱち。
 

inserted by FC2 system