夕方 信号で立ち止まるとアスファルトの照り返しからか、むわりと夏の匂いを閉じ込めた風が肌を包んだ。急に思い出したように汗が吹き出す。 「あつ…」 自然と声がもれた。車が通り過ぎて行く。 向かい側には、僕と同じように信号を待つ浴衣姿の女の子たちがいる。まるで暑さなんてどこかに置いてきたような、そんな涼しい顔で。 そういえば電車で少し行った河川敷で花火大会があるって聞いたな。花火なんて何年も見てない。田舎で見たあの花火から何年だろう。今年は帰れなかったけど、あの子は元気だろうか。この夏かなり暑かったけれどへばってないかな。西瓜や葡萄はもう食べただろうか。 信号がかわり、女の子たちとすれ違う。 ――――ちゃん、花火、いこう。 え。 あの子がいた気がして振り向いた。そんなわけないけど、なんとなく。帰らなかったこと怒っていたのかもしれないと、なんだか考えてしまい休みのうちに、行こうと思った。 あの子の墓参り。 そうして西瓜と葡萄を目一杯食べよう。 来週には夏休みも終わり、せわしない日々が始まる。 END *** こういう、不意をついた話が好きです。 |