丸屋つめあわせ
―ヒロミ
ああ、わかった。
なんでこんなに彼が気になるのか。
それは同族嫌悪みたいなそういうのかもしれない。
私がオケを想うように彼もオケを想っているからだ。
―――――
―たびだち
「さみー、まじで、歯が」 「じゃあしゃべんな」 「最近丸屋ってひどくない」 「桶川に優しくなんかできるか」
少しの本音。 彼はへらりと笑って北風を全身で受け止めていた。冬の、話。
「気をつけてね」
三月といってもまだ寒い朝、園子は俺を見てそう言った。うん、と頷く。 住み込みの仕事が見つかった。時給だってよくない。それでも金が必要だった。できるだけ母さんの負担を減らしたかった。園子や雅、健二は大学に行かせてやりたい。電車で三時間の、場所。見知らぬ土地。不安しかない。
「気をつけてね」
もう一度園子が言う。頷いた。
ボストンバッグをかけ直す。電車がきた。薄ぐらい夜明けの中に浮き上がる電車の二つの目をみたら、唐突に泣きそうになった。
桶川。 お前はいまなにしてる。 俺は今からここを離れる。いやだな、正直
「お兄ちゃん」
電車に一本踏み込んだ。まだ発車するには少しある。俺は振り向き、園子を見る。
「勉強たまに教えてね、電話するからね、ご飯ちゃんと、た、べて、」
園子の目から大粒の涙が溢れる。愛しい妹。 そっと頭をなでると、彼女はすん、と鼻をならした。
ドアが閉まり、電車が発車する。園子に手をふりながら中に入った。
俺は今からここを離れるよ。 桶川。 お前ばっかり探してしまう二年に、おさらばする。
いやだよ、本当はな。
END
*** ここ最近書いた丸屋のものです。 「ヒロミ」は大学にあがるころにそのうち桶川の彼女になりますが、彼女は薄々気づいていたということです。 そして「たびだち」で、丸屋と桶川が冬も一緒にいたということになってますけど、本編では夏で終わってます。 個人的には冬に花火をさせたかったのですが…
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